夕陽って、いいなって思う。
見ていて、羨ましい。
明け方、一日が産声を上げて、
夕方、太陽が沈んでいき、一日が一生を終える。
地平に飲まれるその、謂わば死の瞬間が一番美しく映る。
明け方になればまた、新しい一日の命が産声をあげる。
その繰り返しだ。
夜は、それを包んでいる。
世界を包んでいる。夜は、永遠だ。
私は今日が産声をあげるときにはこの世界におらず、
目を覚ました時、すんでのところで死に目に会えた体たらくだ。
ようやく出かけたのは先ほど、日付が変わったあとのはなし。
1日24時間という単位で生活している私たちからすれば、
今も何年何月何日の何時なのかもしれないが、
夜は、そのどれにも属さない世界。
太陽が昇っていると、
一日の中に閉じ込められている様な閉塞感を感じる。
夜になれば、そこに覆い被さった蓋が取れて、
一日の外に世界が解放される。
どこまでもいけそうだ。
どこまでもいけるのに、
どこにもいけないのがもどかしい。
空が遠い。
十数年前と比べてシートの低くなったブランコに腰をかけている。
私の吐く紫煙と、
ブランコの軋む音が、
空に、どこまでも高く昇っていくのが見える。