一月の蠅

処方された薬が切れた。

 

そんな夜に友達が電話をかけてきた。

 

もちろんこの時間にかかってくる電話に要件などあるはずはなく、

 

だらだらと、一時間程度の会話を済ませ、

 

「ねむい、おやすみ」

 

と、彼女は電話を切った。

 

人とのコミュニケーションは、場合によっては薬よりも薬になる。

 

それがお酒の場合もある。

 

だけど、切れた時の副作用は薬なんかよりも強い。

 

そして気づいたことが一つ、私が埋めようとしている何かは、

 

もう、埋まらない気がした。

 

きっと私が選ぶ「薬」では埋まらないものなのだ。

 

喉が渇いたときには水を飲む。

 

腹が減ったときには物を食う。

 

幸せになりたい時は?

 

 

不完全な月が真っ黒の画用紙に穴をあけたように、

はっきりと浮かんでいる。

 

天を覆う画用紙に針を刺したような、ちっぽけな光を集めてみる。

 

どれだけ集めても、

 

月にはそもそも形が合わないから、

 

綺麗に優しく握ったところでぼろぼろ、と崩れていく。

 

ならば、月の方を埋めてしまえ、と筆を持つが、

 

私はそんな真っ黒で強い墨なんて持ち合わせていない。

 

月、今日もうるさかったなあ。

 

私はこんなに寂しいのに、ちっともそんな素振りは見せない。