クレ

どうやら、生きなければならないらしい。

 

強迫観念に襲われる。

 

半ば強制的に意識させられる状況下に置かれると、

 

殊更大義に思てくることが不思議。

 

どうやら、金が必要らしい。

 

私は金を産む術を持たない。

 

喉が痛い。

 

水を飲むのには金がかかるらしい。

 

こころが恋しい。

 

私の眼球が黒のインキを舐るのにも、

 

どうやら金が入用なのだという。

 

医者は、生きるためには今は仕事をするなと言う。

 

だが奴らは、生きたいのであれば我々に金を払えと言う。

 

私は奴らから血を買っているらしい。

 

なのに医者の野郎ときたら、

 

今日なんか文字通り私の血を呉れてやったと言うのに

 

余計に金をせびってきやがった。

 

4,790円と血で、私は血を買った。

 

 

 

失った血を取り返すかのように、

 

私は黒い血液を求めて、また金を溶かす。

 

4,042円のインキを運ぶ車窓を斜陽が貫く。

 

そいつが、「ほら、みてみろよ。今、今日が死ぬんだ。」と言う。

 

私は、その、命を燃やした故の美しき朱の中から、

 

「いまだ、いまだ」

 

との悍ましい声を聞いて、戦慄し目を背けた。

 

 

 

空気のやたら澄んだ今日の陽は、

 

私の不細工とちっぽけを、臆病故の存在を、

 

大袈裟に引き伸ばしている。わかってる。痛いって。

 

 

 

今日も申し訳が立たない。だれに?私に。

ごめんな、明日も、よろしく頼むよ。