気づいたら、職場の時計の差す時間がずれていた。
そして、これまた職場の別の場所、元々ズレていた時計の針が直っていて、
さらには気に入りの喫茶店の時計の遅れも直っていた。
変わっていないのは、日毎に早まり、毎朝ズレを直す私の腕時計だけだ。
正確な時計など存在できない現実で時間という概念に翻弄されている。
真実のなど誰にも分からない世の中で
事実だけがコロコロ転げ回る様に似ている。
馬鹿に真実を望んでいるばかりに、その変遷に追いつけずに立ち尽くしている。
それぞれの日常の時間が一斉に動き出し、私だけが置いて行かれているような寂しさ。
離された手の温もりの温度を知る術もなく、
今はここにないという事実だけが存在している。
前の職場の近くには大型商業施設が建ち、
最近バンドでメジャーデビューを果たした「元」戦友からの連絡は途絶え、
人を信じることが怖くて恋愛ができないという悲しみを共有し、
寂しさを埋めあっていた友達は突然恋人を作った。
コチ、コチ、とそれぞれの時計が動く中、
どの時間にも属していない私の時計は整備不良でいつからか動かせないまま。
叶えるには、まだ足りていないパーツがあるみたい。
歪んだ時間の中で、それをずっと探している。
写真は最近お会いしたハンドメイド作家DaQuiseさん(Twitter ID:@DaQuise_)の、ピアスとオブジェが一体になった作品「歪んだ時からの逃げ道」です。