昨日は少し気が立っていたように思う。
自分のご機嫌を取るというのはいかに厄介な仕事なことか。
雪だ雪だ、とはしゃいでいたのにもかかわらず、
少し気に触るようなことがあれば昨日のようなことをすぐに書いてしまう。
本当は雪にまつわることを書きたかったのだが、
どうもそういう気になれずに断念した。
とはいえ、今日も今日とて喫茶店がらみの記事を書こうとしている。
昨日はあれほど尖った文章を書いてしまったので今日は少しくだらない話を。
私には行きつけの喫茶店がある。
そう、あの、喫煙者のオアシスと化している、駅前すぐそばの喫茶店だ。
好きな席ランキングがあり、昨日座った席はワーストに近い席で、
一番好きな席は店内の奥にあるソファー席の一番奥だ。
このご時世、飲食店はどこも換気を徹底していて、
やはり外気が入り込んでくるもんだから、
入り口から一番遠いその席が喫茶店として一番快適なのである。
店内はそこそこの音量で賑やかなジャズを流しており、
客席のフロアの面積は狭いとは言えないくらいの大きさなので、
いつも人が多く、その分賑やかな店内だ。
価格はリーズナブルで喫煙可。
この点が支持されている最大の要因に思える。
その証拠に、客層はほぼほぼ九割喫煙者が占めている。
この話は数週前の記事でも説明したような気がするが。
その日は運良く、私の一番好きな席が空いていた。
もちろん私はそこの席に決め、220円のブレンドコーヒーを券売機で買った。
ここにくるときは、読書をしたり、勉強をしたり、文章を書いたり、察しの通りこの記事も今その喫茶店で書いている。
先ほども述べたように、お世辞でも落ち着いた店内とは言えないので、私はイヤフォンのノイズキャンセリングの機能を活用し、静かなピアノ曲を聴きながら作業することがほとんどだ。
その日の隣は、同年代か、話から察するに大学か何かに通う学生のような男性二人だった。
こういうとき、隣の客に耳を傾けることが楽しい時もある。
もちろん逆に不快な時もある。
どちらも陽気そうな背格をしており、お互いの趣味の話で盛り上がっているようだった。
作業をしなければならなかったので、私はイヤホンをはめ、作業に集中する。
その日は小説を執筆していて、調子が良かったのかいつもよりも多い枚数かけたことを覚えている。
その店は要請に従って営業時間を早め、20時閉店だったため、余裕を持って作業を終えてイヤホンを外した。
耳が解放されると同時に隣から、
「あ、これトレーないと片付けるの不便じゃない?」
と聞こえてきた。
私のテーブルには、コーヒーのカップと灰皿しかなかったため、
トレーを使う必要は正直なかった。
「あ、これしかないんでよかったら使いますか?」
と尋ねると青年は快く応じてくれてお礼を言って返却口に去った。
ドヤ顔をしながら
「いつか別の誰かに、この恩を返してあげてくださいね」
と、彼らの後ろ姿に心の中で言い放った。
鶴の恩返しじゃないけど、それが巡り巡って、
「いつか助けていただいた、あの時のトレーです。」
なんて私の前に現れたら素敵だな。
あ、助けたのは別にトレーじゃないか。
そうこうしているうちに20時が迫っていたので
急いで退店の支度を始める。
荷物を鞄に全て詰め込み、テーブルを確認すると、
コーヒーのカップ、灰皿、さらにお冷グラスもあった。
お冷グラスもあった。
ごめん、やっぱさっきの恩直通で今返してくれん?