こつ、こつ、こつ、と
ハイヒールがアスファルトを突く。
その強かな音はまるで、
こんな真夜中に行き先をわかっているようだった。
私も連れて行って欲しいと思った。
強引に、私の部屋の中に入ってきたのだから、
責任を持って私を連れて行ってよと思う。
夢でもいいから。
私は一人では間違いが多すぎる。
今日も何回も間違えた。
今夜も夢に見るのは誰かの後ろ姿。
右でも後ろでも正面でもない。
今も、
遠ざかっていく靴音。
私の右側に、
強かで高慢な、
まるで正解を知っているかのような
少し硬い靴の音が恋しい。
今日は無性にこれが聴きたくなった。
今日も寒いね。どうかご自愛ください。
元気になってね。