私は、東京が好きだ。
東京に憧れている、と言った方が正しいかもしれない。
今の私には持て余してしまうもので、
実際東京に降り立つと何をしていいのか分からずに固まってしまう。
京王線のレールの上を数時間も迷子になった。
今日は吉祥寺にて映画を観に行った。
映画のシーンの随所随所で井の頭公園でのシーンがあった。
井の頭公園は思い出の公園だ。
昔付き合っていた恋人との最後のデートの場所だ。
前に観た時はタイムリーな場所な印象があったけど、
比較的俯瞰して観ることができたと思う。
前回は友達と二人で、今回は私一人。
ちょうど三ヶ月前ごろ。
あの頃とは何もかもが変わってしまっていた。
思い出すのはちょうどその頃のこと。
君は私のことを好きと言った。
私はなにも言えずにいた。
私は何もかも安泰だと思っていたからこそ、
俯瞰して見ることが出来ていたのかもしれない。
「女の子のモデル、あの子ですよね…?」
そうだよ、その通りだ。
私は毎晩、君の虚像と自分が書く文章の中で向き合っている。
その時君の実像が、どこかの誰かに、
私に見せたことのない顔を見せていると想像する、
私の孤独が君にわかるだろうか?
前に観た時より頭には靄がかかっていた。
帰りに友達がアルバイトしている喫茶店に寄った。
あまり精神状態がよろしくなかったので、
顔を見た瞬間に泣きつきそうな恐れもあったのだが、
元気に楽しそうに働いている姿を見ただけで、
無根拠に安堵が込み上げてきた。
仕事中にも関わらず席に来て世間話を持ちかけてくる勤務態度はこちらが冷や冷やしてしまうものがあったが、私は友達と話しているだけで救われる。
見ず知らずの店長がケーキを出してくれた。
甘いケーキがしょっぱくなりそうで、堪えた。
ケーキはとても甘いものだった。
東京に出れば、一人でも人はいっぱいいるんだ。
いつも持て余している孤独を分け合ってくれている錯覚に陥る。
早く気兼ねなく、寂しくならずに済めばいいなあと思う。
だから、いつも、早く元気になることを切に願っている。
君のため?いいや、私のため。
いつも自分ばっかでつまらないなあ。
今日は何を聴いて寝ようか。