2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

蛍と夜を

またここに帰ってきてしまった。 「救い」とは、何かを犠牲にした上で享受できるものだ。 例えば副作用があったりとか、 居心地が良い場所の空気が毒であったり、 地獄の沼の温度がちょうど良かったりとか。 いつか私の心に穴を開けた「救い」で、 また私は…

right

こつ、こつ、こつ、と ハイヒールがアスファルトを突く。 その強かな音はまるで、 こんな真夜中に行き先をわかっているようだった。 私も連れて行って欲しいと思った。 強引に、私の部屋の中に入ってきたのだから、 責任を持って私を連れて行ってよと思う。 …

light

なんだかんだ、光が恋しい。 また、光に逃げてきた。 君と会えなくなってから私は、 闇にばっかり逃げていたように思う。 闇を探せるうちはまだ光の当たる場所にいたんだと思う。 ある時日本に長い夜が来た。 私にはあまり実感がなかった。 申し訳ないけど、…

L&R

アルバイトを探していた。 書店のアルバイトを探していた。 簡単に行ける範囲の書店はどこもアルバイトを募集していなかった。 花屋のアルバイトを探した。 やっぱり花屋も募集していなかった。 自分の愚かさをここまで呪うことも生きてて少ない。 どうして…

壁一枚

こんな時間まで、私は文章を書いていた。 文章を書くことはアルコールを摂取することに似ている。 文字に向き合っている間は、ずっと自分に酔っていられる。 だけど一度集中が切れてしまうと、 人恋しさに寂しくなってしまう。 今年の元日を思い出す。 大晦…

ハイライトメンソールのソフトケース

私は喫煙者だ。銘柄はハイライト。 言うところの、ハイライターだ。 私の文章は、煙草の煙を燻らせながら書くことが多い。 そんな私には、いきつけ(と呼ぶにはいささいか大衆的な店だが)の喫茶店がある。 昨今ではこうして、文章を書くために使う喫茶店を…

恋の伊達者

ストレリチアの苗を買った。 朝、といっても午前の11時、 友達Tに付き添ってもらって 曇天模様のひんやりとした街へ 散歩と称し足を動かした。 花屋を二軒、素通りしてついたのは ダイソーだった。 Tは咲いている花には興味がないらしい。 そしてダイソーに…

チューニングの拙い子守唄

ホームクラシック名曲集 Concert②月光 とだけ書いてある。 メンデルスゾーンの春の歌から始まり、 サティのジムノペディ一番で終わるA面 1992年に製作されたカセットテープで、 再生機器もカセットも昨年四月に亡くなった祖父の遺品だ。 ふと、祖父の部屋に…

影が長い時間に

私は、日記を書ける人をすごいと思う。 一日って、本当に何もない。 仕事をしている時からずっと、 考えることしかしていない。 主に、自分のこと。 あの人のこと。 たまにあの子のこと。 そんな私がその日一日を振り返って文字に起こせば、 もうそれは自傷…

下を向いて歩くことが増えて

夜の帰り道、と言うものも久しい。 仕事を辞めてから未だに一週間しか経っていないことに恐れ慄くが、年末年始の喧騒がひと段落し、最近はまた寝室に湿度を閉じ込める帳が降り始めた。 仕事を辞める二週間辺り前から夜道をぼんやりと、交互に視界に流れ込む…